シンがヤマト隊に配属され、いい加減な隊長とそれをそつなくカバーする副官兼連隊長のコンビとその他諸々の濃い面子―――――――その中でアスランを巡りキラに食って掛かったり隊則を無視したり、命知らずな行動で実は他の面々に負けず劣らず自分がその特異な存在感を醸し出していることに本人は気付いていないが―――――にも慣れた頃。
ブリーフィングルームにおいてＭＳパイロットを中心とした面子が集められ、次の作戦についての説明が行われていた。
廃棄コロニーに立て篭もった不穏分子の掃討が目的だが、相手は今までにない規模の火器やＭＳを保有していると考えられており、いくつかこなした任務の中でも今回は大規模かつ危険な作戦だった。
大戦経験者にとってはそうでもないのかもしれないが、実践経験のまだ少ないシンは少し緊張していた。
作戦の細かな指示を適格、且つ完結にアスランが述べた後、会議をまとめるために最後にキラが前に立ち、微笑みながら口を開いた。

「とにかく頭を叩けば余裕だから。今回一番最初にAポイントに到達して指揮系統を抑えた人にはアスランからご褒美があります」
「えっ？なんだ、ご褒美って」
突然の言葉に横のアスランが驚いてキラを見た。
全く聞いてないらしい。
「ご褒美っていったら、やっぱりアレじゃない？一晩アスランがサービスしてくれるとか」
「キラ！」
アスランが咎めるように言うが、ざわざわと部屋が色めき立つ。

「隊長の僕に二言はないよ。だから皆、頑張って落としてねｖ」
「ちょっ…、キラぁ」
困惑しているアスランを尻目にキラが部屋を出て行く。アスランが小走りにそれを追っていった。


「ってか、今のマジかよ？！！」
ガタリと音を立ててシンが立ち上がる。
「あー。たまにそういうイベントあるんだよね、ウチ」
シンの隣りに座っていたハイネが言った。
「たまにって……。アスランさんに手を出しちゃいけないって隊則なのに？」
「そ。だからたまにそういう餌やってこう、ヤル気を出させたりするんだけど……」
「だけど？」
真剣な表情のシンに苦笑しながらハイネは肩を竦めた。
「…結局キラかアスランが最初に目標達成しちゃうんだよねぇ。だから今までキラ以外に美味しい思いしたヤツはいないわけ」








その数ヵ月後のミッションで、今まで隊長以外に誰もありついたことのないといわれた『アスランのご褒美』だったが、その常識をシンが初めて打ち破り隊内の伝説のひとつとなったのはつい最近のことである。
ついでにその後勃発したフリーダムVSディスティニーの修羅場はヤマト隊内だけでなくザフト内でも伝説として残ることになったのだった。









（ＥＮＤ）