薄暗い無機質な部屋に、ハァハァと獣染みた息遣いと啜り泣く女みたいな声が耳につく。
嗅ぎ慣れた雄の臭いも不快だ。

オレは渡された温い缶コーヒーを片手に目の前の光景を傍観していた。
すでに自分は用済みらしい。

切っ掛けは自分とはあまり係わり合いのない部署の緑服の奴等に持ちかけられた話だった。
あの人への、多少のヤツ当たりはあるが理不尽とは言い切れない怒りをどうにも消化できずにささくれ立った気分でいたオレは、『私刑』という言葉に他の意味を察することもなく、昼間拳で殴られた報復に２、３発入れてやるくらいの気持ちで、―――― それどころかやはりオレ以外にもあの人に不満のあるヤツはいるんだ！とよく知りもしないのに変な連帯感まで感じたくらいで――――その話に乗ったのだった。

それが全く見当違いだったと気付いたのは、アスランへの怒りに忘我しこいつ等に煽られて、無理矢理押し込んだ欲望をあの人の中でぶちまけた後だった。

というか、完全にハメられたというか、誘導されたというか。
フリーダムのパイロットのことを引き合いに出されて頭に血が上ってわけが分からなくなった自分も情けないが、オレがそんな行動に出るとは思いもよらず、オレへの罪悪感もあってか最初無抵抗で殴られていたこの人も迂闊だった。

だってこいつ等、最初からコレが目的だったに違いないんだ。

オレがアスランから自身を引き抜くと、そこからはライオンの食べ残しに群がるハイエナの如く。
ぐったりとしたその肢体をホントに群がるように囲んで思い思いに嬲るのを見て、オレはやっと頭が冷えた。


「くっ……ん！ひィ…っ…あ…！」

ブツブツと興奮気味に何かしゃべってる男達の声のなかで、あの人の声だけ痛々しくも艶めかしい。
普段の落ち着いた声が嘘みたいな、高くて女みたいな声。

オレは不味い缶コーヒーの中身を啜りながら、あの人を見ていた。

もう何人目かの男に突っ込まれ、両手をそれぞれ拘束されながらも身じろぐ様に逃げを打っている。
なまじ精神力と基礎体力が高い所為で流されることも失神することも出来ないなんて可哀想だ。
それでも確実に削られた体力で抵抗しようとする様は余計に男達を興奮させる。

ああもう、ホント。馬鹿な人。

煽られた一人がアスランの顔目掛けて白濁を放った。
「あっ…ヤッ…！イヤだ…ぁっ…！」

悲痛な悲鳴。
その傍らではアスランの左手を取って指の根元から１本１本、>美味そうに舐ってるヤツがいる。
異様な執着を感じるその様が不気味で凄く気持ちが悪い。

こいつ等にとっても『アスラン・ザラ』は英雄で憧れだったんだろう。

―――――そうは思うけど。


なんだろう。もの凄く感じる、この不快感。


アスランの足を抱えていた男の動きが一段と激しくなる。
「ひ…ゃっ！…んぁ！んっ…！……くぅっ…！」
アスランの悲鳴が上がる。イヤイヤをするみたいに首を振ると、涙と汗が散り、精液で湿った蒼い髪がパサパサと音を立てた。

男がみっともなく「イク！イクぞ！」とか獣染みた息遣いで唸りながらアスランの中で果てるのを見て、オレは掌の中の缶を握り潰すと徐に立ち上がった。
缶を投げ捨て迷わずその男の脇まで行く。

男がオレに気付いてビクリと身体を震わせた。
そんな男を嘲いながら、オレは声を掛ける。



「なぁ……オレ、もっかいイイ？」


男はそれに驚き、だが得心がいったのかすぐに入れ替わる。
オレのお陰で美味しい目を見たのだから他の奴等だって不満はあっても文句はない筈だ。
「…っ……シンっ？！」
………信じられないといった表情でオレを見る、目の前のこの人意外は。

オレが近寄ったとき、一瞬ホッとしたような顔をした事にオレは気付いていた。

――――ホント、馬鹿だよな。

アスランは一縷の望みを絶たれ、今度は怯えたように身を引こうとするが今更どうにもならない。
「シン…！シンっ！！…ダメっ…もう、無理っ！」
泣きながら懇願するその顔を見ながら、容赦なく蹂躙のための準備に掛かる。
肢体を二つ折りにして邪魔な足を他の奴等に抑えさせ、血と精液でぐちゃぐちゃになったそこに自分の凶器を押し当てた。

「…っ…イタ…っ！いっ……シンっ…！」

苦しい姿勢で泣き喚くその人を見る。

滑稽でイヤらしい、その様を見て。


「……アンタ、可愛いな」

オレは目を細めて笑った。



ああ、オレも、こいつらのこと言えないな。
そんなことを思いながら。





―――――――だって多分、オレもアンタをずっとこうしたいと思ってたんだ。









（ＥＮＤ）

裏にあったアスランくるくる絵についてた小話です。
くるくるなのに、何故か脳内はシンアスで妄想。
いや、だってアスランをシメようなんて思いつくの、シンだけだと思うんだ（笑）。